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研修会

「建築プロジェクトマネジメントフォーラムinふくしま」 の開催結果について

2017.11.8

 当組合では、11/1(水)に福島市の建設センターで今年度の事業計画に上げていた「建築プロジェクトマネジメントフォーラムinふくしま」を開催し、組合員をはじめ行政担当者など約50名が参加しました。

 冒頭、当組合の平子代表理事は、「東日本大震災以降、自治体等において大規模プロジェクトでPM/CMが採用されていること。建設生産・管理システムの一つとして品質管理、工程管理、コスト管理等が、今までとは異なる視点で取り組まれていること。当組合にも基本構想・計画の段階からの受託業務が増えてきていることなど、PMを新たな視点でとらえる必要がある」と挨拶し、参加者に本日の講演会を参考にしてほしいと述べた。

 続いて、「せまりくるCM/PMの波と見つめなおすべき発注者の視点」と題して、(株)山下PMC代表取締役の川原秀仁氏に講演いただきました。

 川原氏は、CM/PM業務が急速に普及した理由として、建築基準法(大規模木造建築の拡大)、建築士法(一括再委託の禁止)、耐震改修促進法(大規模建築物の耐震化)等の改正が素地になったこと、公共工事品確法の施行により多様な入札契約方式の選択・活用が可能になったことなどがあると説明した。
 その上で、多様な発注方式は国の指針が明確になったこともあり、地方自治体でも設計・施工一括発注(DB)方式や設計段階から施工者が関与する(ECI)方式等の採用が可能となったこと、併せて、発注者支援業務としてCM方式やPPP方式が促進されるようになったと説明した。
 では何故、このように多様な発注方式が求められるようになったのか。これまでの「仕様発注」から「性能発注」への方向に向かっているのがその要因で、発注者が早期に事業見通しをつかむこと、また、高い精度で納期短縮を実現させることが主眼にあるという。工事の基本である「必要なものを、必要な時に、必要なだけ」をいかに効率よく実現できるかであり、工事現場での作業割合30%に対し、現場までに必要な生産と調達の作業割合70%とこれまで以上に前段処理の割合が高くなってきている。そのために事業計画に適した発注形態を管理できるマネージャーが必要になってきているという。
 特に建設プロジェクトは多くの発注者にとって非日常事業であり、専任のマネジメント機能が必要になる。併せて、発注者が求めるのは企画立案から施設運営に至る期間(調達・設計・建設)の短縮、合理的なプロジェクト推進手法の企画実践、予算内での低コスト・高品質な成果である。一方、受注者はプロジェクト受注後の調達・発注、設計、工事施工の時間(工期)をできる限り確保したいとの思いがあり、双方に大きな溝がある。川原氏は、このことを認識した上で逆利用していけば大きなビジネスチャンスになるという。  
 その手法がCM/PM等のマネジメント業務であり、いくつかの施設建築にまつわる次世代産業モデルを紹介した。①これまで技術先進立国を堅持することで生産性を上げること、②クールジャパンの国づくりを推進することで内需(施設整備)を活性化させること、③耐用年数をむかえる国内インフラ・RE(不動産)再構築と強靭化を図ること、④健康長寿社会の実現と少子高齢対策を進めることで継続的なインフラの整備を行うこと、そして、それらに関わる、⑤メディアおよび情報流通の変革、⑥金融ビジネスの変革を行うことにより、これまで以上に「情報」と「カネ」の供給を行うこと、さらには、⑦建設生産制度改革へのチャレンジとして日本の建設生産手法自体の改革をうながしている。これらの経済効果は、①で100~200兆円、②10~50兆円、③60~数百兆円、④50~60兆円、⑤30兆円、⑥20兆円、⑦50兆円のポテンシャルを持つ規模になると説明した。

 次に、会場の参加者に対して真の発注者視点・目線になれているかとの質疑が行われた。
発注者に収める最終成果品は何か。答えは建築物と竣工図書類の2つ。しかし、竣工図書や竣工履歴には大きな関心が向けられていない現状があるという。CMが介在する場合の竣工図書類は、①請負契約上の履歴(工事完了証明書、鍵引渡書、竣工引渡し書、実施工程表、竣工検査報告書等)、②資産としての履歴(竣工図、竣工写真、設計説明書、各種許認可申請書類、最終工事費内訳書(資産分割用)、工事履歴(施工図、各種検査記録、試験成績書等)、工事監理報告書、工事報告書等)、③運営としての履歴(取扱い説明者、施工業者・下請業者リスト、施設運営管理一覧、備品・予備品引渡リスト、総合図等)であり、3つに区分して納品するという。竣工図書類を「資産価値」を最大化し「永続的な営み」を継続させるための情報源として重要な地位を占めるものとしなければならないと説明した。

 おわりに、これからの建設産業を担うための設計体制他の再編成として、これまでの建築意匠の傘下に建築構造、積算・コスト、電気設備、空調・衛星設備を配置する体制から、総合マネジメントを中心に建築意匠、建築構造、積算、インフラ・エネルギー・電気設備、空調・衛星設備と制御・情報システムをグループ化した設計体制に再編成しなければならないこと、また、次世代のビジネスにチャレンジするポイントとして、①建築側の用途や業種で事業を見つめてはならないこと、②次世代事業ニーズは設計者の認識とは少し違うところにあること、③自らのこれまでの建築財産をしっかりと見つめ直し、他分野の改革を自らの仕事に当てはめてみることが必要であるとまとめた。
(報告は専務理事の佐々木でした。)