組合たより「建築物の木造・木質化:技術研修会」の開催結果について
2021.11.25
11/18(木)に南会津町の御蔵入交流館で今年度の教育情報事業の一つである標記技術研修会を開催し、組合員をはじめ行政担当者など約35名が参加しました。
国においては公共建築物の木造・木質化が推進され、県内自治体でも県産木材の利用促進が加速されています。当組合においても令和2年度末に策定した「行動計画:新時代の組合ビジョン2021」の中で組合イメージを「発注者支援団体」に刷新し、発注者からの各種要請に応えられるよう、専門技術が必要となる建築物の木造・木質化についても調査・研究をすすめることとしました。
今回はその一環として、町産木材を活用推進している南会津町から受託した「木の町コミュニティ館」の現場見学会(建て方施工中)を中心に縦ログ構法や耐火建材(塗料)への取組み、さらには県産木材の活用等について意見交換すべく技術研修会を開催しました。
研修会の冒頭、組合の研修を企画している教育情報等企画委員会の濱尾委員長からは、今年度の研修事業計画の概要等について報告がありました。
現場見学会は、御蔵入交流館の隣接地に建設されている木構造(縦ログ構法)の「木の町コミュニティ館」で行いました。施工者の(株)芳賀沼製作:田口現場代理人の案内で施設内に入り、設計・工事監理担当者である(株)はりゅうウッドスタジオの滑田代表より地場産材を活用して加工組立した現場での建て方状況等について説明を受けました。
その後の技術研修会では、林野庁から出向している南会津町農林課の松山室長に「町産材を使う意義:南会津町の林業成長産業化の取組み~地域振興の観点~」と題して、①日本の森林・林業・木材産業の概要、②木材価格の動向、③南会津町林業成長産業化地域構想等についてお話をいただきました。また、(株)はりゅうウッドスタジオの滑田代表には、現場見学した「木の町コミュニティ館」の設計概要について、平面計画と空間構成、構造計画等について説明いただきました。あわせて、(株)芳賀沼製作の系列会社である合資会社良品店の渡邉代表には、自社で取り組んでいる「縦ログ構法」の姉妹構法である「パネルログ工法」の概要と中大規模木造建築物に欠かせない耐火・準耐火構造への個別認定取得に向けた取組みを伺いました。
その後の意見交換会では、①公共建築物を木造・木質化するための課題、②公共建築物の木材利用促進の現状と課題、③大規模木造建築物に使用する木材、などを中心に質疑応答が行われました。
木造・木質化については、これまでも発注者意向や設計者提案により学校教育施設や幼児・高齢者福祉施設等を中心数多くの取組み事例があります。しかし、南会津町のように川上から川下まで地場を活用するとなると木材の樹種や強度、供給量、調達コスト、供給期間などの条件設定が限定されることになります。
南会津町は、H22年度の国の「木材利用促進法」制定を受けて、H25年度に町の「基本方針」を策定し、公共建築物には原則、町産材の使用を義務付けています。その上でH29年度には林野庁の「林業成長産業化地域創出モデル事業」の実施自治体の指定を受け、「林業成長産業化地域構想」を策定し、生産・加工・消費に関する各種事業計画を作成しています。その一つが「木の町コミュニティ館」の整備です。具体的には、林業成長産業化推進委員会に設けた「コミュニティ館分科会」で基本計画を検討することとなり、縦ログ構法の採用については国の補助率は軸組構法が15%であるの対し、縦ログ構法はCLTと同じ50%の補助率となることから財政負担の軽減を図れること、さらには、縦ログ構法は生産・加工・組立まで地元企業で対応可能な構法であったことなどを理由に、本構法採用について「コミュニティ館分科会」の賛同を得たとのことです。また、工事の発注に際しては、材工分離発注により町が木材を調達する方式を採用しています。材工分離発注することで木材調達期間が確保でき、製材所の加工スケジュール調整等も可能となるとのことでした。一方で、自治体や設計者の負担が増加する点や材料支給と工事が別々となることで品質管理や責任範囲が不明確になりかねない点については関係者の協力体制の下で補うこととしたそうです。
町産材を使う意義(南会津町の林業成⾧産業化の取組)
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